第五章 堕ちた人妻 3 ホテルでの一件から三日。加藤育郎は未だ門田弥生を抱いていなかった。 結局あの日は弥生の見てる前で、西脇真澄の女性器と排泄器官に一回ずつ射精した。 どれだけ腰をモジモジさせても、弥生には指一本触れなかった。 行為が終わった後には拘束を解き、普通に家へ帰した。それ以来、門田夫人からの連絡はない。加藤はもちろん、西脇真澄にも。 ついでに言えば、自慢の妻を陵辱されたと、門田が社長室に殴りこみにくることもなかった。 もっとも不貞を働いたのは同性の真澄であり、しかも同意の上での結果である。間違っても、弥生は夫に相談できないと分かっていた。 お気に入りの豪華ソファに背を預けながら、葉巻を咥えて火をつける。 ここまできたら焦っても仕方がない。獲物がやってくるまで待つしかないのだ。 煙を肺一杯に吸いこんだ時、社長室のドアがコンコンとノックされた。 入るようドア向こうの人間に促すと、扉がゆっくりと開きだす。入室してきたのは西脇真澄だった。 セックスのおねだりにでもきたのかと思ったが、どうやらそうではないようである。 真澄の背後から出てきた人物を見て、加藤はニヤリと笑った。 「これはこれは門田夫人。本日はどのようなご用件でしょうかな」 両手を広げて大げさに歓迎ポーズをする加藤に、門田弥生は悔しげな表情を浮かべる。 その目は、理由なんて分かっているんでしょうと言っているようだった。 弥生が完全に室内へ入ったところで、西脇真澄が社長室のドアを閉めて鍵をかける。 「弥生はご主人様に何か言いたいことがあるらしいですわ」 弥生の背後にまわった真澄が、楽しそうに美人妻の両肩に手を置いた。 「ほほう。一体何ですかな」 「あ、あの……私……」 恥ずかしそうに顔を俯かせて、門田弥生は口をもごもごとさせる。 「もしかしたら、夜の夫婦生活についてのご相談ですかな」 このまま羞恥に震える美人妻を観賞していてもよかったが、加藤は単刀直入に切りこんだ。 心から屈伏させるためとはいえ、熟れた人妻の肢体を三日もお預けしているのだ。 毎日真澄に性欲処理をさせていても、頭に浮かんでくるのは門田弥生の悩ましい裸身だけ。さすがの加藤も、辛抱たまらない状態になっていた。 「性欲の強い女性を好まず、セックスと言えばほとんどが正上位。そんな堅物の旦那とでは、オマ×コが満足できないというわけですな」 「そ、そんな……」 「違うと言うのであれば、お前はどうしてここへ来た。ワシは卑劣な手段を用いて、お前を強引にものにしようとした男だぞ」 加藤の言葉に門田弥生は黙ってしまう。 訴えるつもりがあるならば、わざわざ出向いてこなくても代理人をたてればいい。門田弥生の目的は、己の肉欲を静めてもらうためで間違いなかった。 西脇真澄により散々開発された肉体は連日快楽を求め、弥生は自分で処理できなくなったのだ。 女遊びするようなタイプではない旦那といくら肌を重ねてみても、満足できない女体は疼きをより激しくしただけだろう。 そうしてにっちもさっちもいかなくなった美人妻は、単身加藤のもとまでやってきたのだ。 ほとんど計算どおりだったが、まさかアポもとらずに突然来訪するとは思ってなかった。最初はてっきり、西脇真澄に連絡をとるものとばかり思っていたのだ。 それだけ門田弥生は切羽詰まってるのだろう。 現に先ほどから、ロングスカートに隠されている太腿を忙しなくモジモジとさせていた。 欲求不満のフェロモンが放出されているせいか、白い薄地のトレーナーに包まれている胸の隆起も、ホテルで目にした時よりもボリュームがアップしてるように見えた。 「ふむ。黙ったままでは会話になりませんな。話の続きは、後日そちらの決心がついた頃にでも」 これは一種の賭けだった。 股間の一物が熱膨張している加藤は、すぐにでも相手を押し倒したかったが、あえて焦らして門田弥生本人の口から性交を懇願させようとしたのだ。 「真澄君。どうやらお客様はお帰りのようだ」 「ま、待って……ください……」 西脇真澄が返事をするより早く、弥生が声を発した。 ニヤニヤしながら見つめる加藤と真澄の前で、門田弥生は続けて言葉を発する。 「もう我慢できないんです。これ以上……意地悪しないでください」 さめざめと泣く美しい人妻の仕草に、己にあるサディストの炎が熱くたぎっていくのを加藤は感じた。 「そんなつもりはない。むしろ逆だ。お前が望めば、ワシは喜んで願いを叶えてやるぞ。それとも……またワシと真澄の濃厚なセックスを黙って眺めているか」 ホテルでの一件が脳裏に浮かんできたのか、弥生にしては強い口調で「嫌です」とキッパリ言い切った。 「それなら、ご主人様にきちんとお願いしないといけないわ。ほら、自分でスカートを捲るの」 お姉様と慕っていた真澄に耳元で囁かれ、瞼を閉じた門田弥生はおずおずとスカートの裾を掴んだ。 数瞬の躊躇のあと、肉欲に抗いきれなかった美人妻は、夫の職場で夫以外の男性にレーズのはいった純白のショーツを晒した。 「三十路を過ぎてるのに、ここまで白の下着が似合う女というのはそうおるまい」 「それにご覧くださいご主人様。この女、すでにショーツに恥ずかしい染みを作っておりますわ」 真澄の指摘どおり、門田弥生の下着の股間部はすでにグッショリだった。 「ククク。スケベな臭いがここまで届いてくるようだ」 「ああ……許してください」 弥生自身が両手でスカートの裾を持ち上げるため、どんなに恥ずかしくても手で隠すことはできない。 加藤は座っていたソファから立ち上がると、羞恥に身悶えている美貌の人妻に近づき、よく見えるようにその場でしゃがみこんだ。 「嫌ァ」 滑りけを帯びているショーツをドアップで凝視され、たまらず門田弥生が悲鳴をあげた。 「嫌じゃないだろう。こうして見られてるだけで、ショーツの染みがどんどん大きくなっているのだからな」 「う、嘘です……」 否定の台詞に、力強さは微塵も存在しない。 おしとやかだった人妻のうろたえる姿に、加藤はどうしようもなく興奮していた。 「嘘でもない。何故なら、お前はマゾだからだ」 「マ…ゾ…?」 言葉の意味を確かめるように、弥生は文字をひとつずつゆっくりと発音した。 「そうだ。そこにいる真澄と同じなのだよ。羞恥や屈辱が大好物な変態女だ」 ドギつい単語が羅列された台詞に、門田弥生は嫌悪感で眉をしかめる。 「そんな顔したって駄目よ。同じマゾである私には分かるんだから」 肩口の後方から、真澄は弥生の耳たぶに舌を這わせる。 「弥生は間違いなく私と一緒よ」 「そんな……んゥン」 真澄の紅舌が耳内に入りこむと、門田弥生は背筋をブルリと震わせた。 「考えてみて。貴女は夫が働いてる会社で、不貞行為をしようとしてるのよ。いけないことだと知ってても、何故かトキめいちゃうでしょ」 耳への舌愛撫を継続しつつ、重量感たっぷりのふくらみを西脇真澄は両手で揉みこむ。 「それこそがマゾの証。最初は私も抵抗があったわ。でもね、認めればとても幸せになれるの」 「あフン。ま、真澄さん……」 「あら。この前みたいにお姉様と呼んでくれないのかしら」 真澄の手が上衣の中に潜りこんでいく。ブラをずらし、露になった乳房を直に揉みほぐす。 「おっぱいをそんなに強くいじらないで。真澄……お、お姉様ぁ」 「うふふ、いい子ね。そんな弥生にもうひとつだけ質問よ。これから一生、旦那とのつまらないセックスだけで満足できるの?」 弥生の両目がカッと見開かれた。 淡い桃色のルージュが塗られてる唇をわなわなさせ、何かを深く考えこんでいる。 「人は誰でも快楽を求めるもの。決して悪いことなんかじゃないわ。さあ、自分でショーツを下ろして、私たちのご主人様にお願いするの」 以前の門田弥生ならば、キッパリと誘惑を拒否しただろう。 しかし、今の弥生は真澄と悦楽の日々を過ごし、一度は肉欲に溺れてしまっている。 何の不満もなく幸せだった夫婦生活は急激に色あせ、加藤の計略どおりに美貌の人妻は転落を開始した。 スカートから離れた両手が、スルスルと淫臭漂うショーツを脱がしていく。 勿体つけてたのが嘘のような、淡々とした行動だった。 秘部を隠していた薄布がストンと足元に落ち、もう一度門田弥生は自分のスカートを捲った。 「ど、どうか……私を可愛がってください」 |