第三章 完全なる調教 3 「うあんッ!」 突然耳へ微かに届いてきた電動音。 それが何かを理解する暇もなく、西脇真澄はビクリと身体を震わせてしまっていた。 恨みがましい目を、社長である加藤育郎に向けてみるも、相手は平然とした様子で真澄を見つめている。 「んん……う……」 クリトリスが下着によって刺激されている。その振動から察するに、恐らくショーツの内部に小型のローターが仕込まれていたのだ。 今さらこの仕掛けに気づいたところで時すでに遅し。媚薬で火照り続けていた身体は、大量に押し寄せてくる快楽に早くも屈しそうになってしまっていた。 あっという間に内腿がガクガクと震え、ショーツが濡れていく感触が伝わってくる。 「どうした。ずいぶんと息が荒くなってきているじゃないか」 わざと加藤は少し大きめの音量で真澄に声をかけた。狙いは他の社員たちの注目を集めさせるためだ。 もともと社内でも人気が高かったアイドルの真澄の異変に、加藤の目論見どおり、室内にいる男性社員たちの視線が次々と集中していく。 快楽の他に羞恥も手伝っているのか、もの凄い勢いで真澄の頬がカーッと赤く染まっていった。 フフン。今日まで奴隷のように扱ってきた男どもに、好奇の視線で見られるのが屈辱という感じだな。だが、まだまだこんなものではすまさんぞ。 愉快壮快な気分のまま、加藤はブラジャーに仕込んでいるローターのスイッチもオンにする。 「ふああッ!」 男たちが見ているのにも構わず、耐えられなくなった真澄は一際高い声で鳴いてしまった。 ギャラリー化している男性社員たちのザワめきが大きくなり、その注目度も一層増してくる。 こんな、こんな奴らの見ているまえでイクなんて……ぜ、絶対……! 「くう、ううう――ッ!」 必死の我慢もむなしく、真澄の頭の中は真っ白になり、気づけば快楽の大波に飲み込まれてしまっていた。 絶望や悲しみといった感情が全身を支配していて、本来は甘美なはずの絶頂も今の真澄にとってはおぞましいものでしかなかった。 「だいぶよかったみたいだな」 加藤の言葉にも真澄は反応しない。 それならばと加藤は美貌の女性社員にとって、さらにショッキングなことを告げる。 「最弱のレベルでそんなに喜んでいると、身がもたんぞ」 西脇真澄が何か言うより先に、加藤はローターのレベルをさらに一段階上にした。 ただでさえ媚薬でメロメロになっていた真澄は、ついに喘ぎ声すら我慢することができなくなっていた。 「んああ、あう、ひいいッ」 顔を机の上に突っ伏し、細肩をビクンビクンと震わせる。 「こらこら、ちゃんと顔を上にあげておかないと駄目だろう」 五段階まで存在しているローターのレベルをさらに上げつつ、加藤が自らの手で真澄の顔を持ち上げる。 すると、それを見た複数の男性社員から一声に、凄いだの、たまらないだのという言葉相次いだ。 「クッククク。今まで見てきたなかで、一番いい顔をしとるじゃないか」 普段の美貌が嘘のように、西脇真澄の表情はとてつもない淫猥さに満ち溢れていた。その惚けた表情だけで、何人もの男性社員が前かがみになって股間を両手で押さえてしまう。 「そういえば今は商談の真っ最中だったな。そろそろお茶のお代わりでも持っていったらどうだ」 もちろんバイブのスイッチは入れたままである。 つい先ほどまでの真澄ならば、うまく断る術を考えていただろうが、今の状態では断られる心配をする必要はなかった。 夢遊病者のように頷いた美貌の女社員は、用意されたお茶が乗ったトレイを受けとると、ふらふらとした足取りで部署内にある応接室へと向かっていった。 「お、お待たせしました」 顔をポウッとさせている真澄がお茶をテーブルに置こうとした瞬間だった。クリトリスと乳首を刺激していたローターの動きがさらに激しくなったのだ。 あまりの衝撃に声すら出せずに、口だけが金魚のようにパクついてしまう。 「ど、どうかなさいましたか」 得意先の担当者が心配そうに真澄に声をかけた。 二十代のこの男は、以前真澄に声をかけてフラれてしまっていた。それでも密かに想いつづけていて、商談にきては淡い妄想を抱いていた。 その妄想相手がお茶だしをしようとして、動きを急に止めてしまっている。しかもその顔は最初に出してもらった時よりも、ずっと色っぽくなっていた。 「ほら、早くお出ししないと」 美人女社員の淫猥な様子に、専務の近藤と取引先の担当者が呆然としているところへ、社長である加藤育郎がその姿を現した。 恐縮してソファから立ち上がろうとする二人を制して、加藤は真澄の耳元で早くお茶を出してやるよう再び促す。 それでも西脇真澄は半開きの唇からねっとりとした呼吸を繰り返すだけで、まったく体を動かそうとはしなかった。 「仕方ないな。では、ワシが手伝ってやろう」 「ま、待ってください。い、今動くと……」 多少の刺激でも絶頂の引き金となってしまう。それも今までのような軽めのではなく、本物の頂上へと駆け昇ってしまいそうなのだ。 しかし、そんな真澄の言葉を受け止めてくれるほど、加藤育郎という男は優しくなかった。 「ならさっさとするんだな。ワシもいつまでも待てんぞ」 「うう、わ、わかりました……」 敏感部を襲う強烈な振動に耐えながら、ゆっくりゆっくり腕を動かしていく。 美貌の女社員とワンマン社長の間に、何が起こっているのか知らない男二人はその光景を息を飲んで見つめている。 なんとか恥を晒すことなく、静かにお茶をテーブルの上に置いてホッとしたのも束の間のことだった。 「時間のかけすぎだ。これはお仕置きが必要だな」 「そ、そんな……」 背後から悪魔の宣告が聞こえ、ヒップに強烈な痛みが走った。それがきっかけとなり、体内に溜まっていた快感が一気に爆発してしまう。 平手でスパンキングされたんだ。そう理解した時には、真澄の股間はどんどんと冷たくなってきていた。 「あ、ああ。あああ……」 絶望的な呻きを漏らし、ショーツから溢れた液体もスカートから漏れていく。 「こ、これは……」 近藤が目の前で起きている出来事に、ゴクリと喉を上下させた。 社内で人気bPの美人社員が、あろうことか自分たちの目の前でお漏らしをしてしまっているのだ。 「まったく、恥ずかしい奴だな。こんなところでお漏らしをしてしまうとはな」 激烈なエクスタシーを味わい、大げさなまでに腰部を痙攣させている真澄のヒップをなおも加藤は叩いてやる。 一発目と比べてだいぶ力を抜いているため、ペチペチとした軽い平手打ちだが、それでも命中するたびに西脇真澄は腰を左右にくねらせていた。 「こら。お漏らしして、見苦しい思いをさせてしまったことを、取引先の社員の方にちゃんと謝らんか」 「うう、お、お漏らしをしてしまい、申し訳ありませんでした。臭いおしっこを垂れ流してしまった真澄を、どうかお許しくださいませ」 私はもう堕ちていくしかないんだわ。 恥辱と絶望のなかで意識を朦朧とさせながら、屈伏の涙を流している真澄は男たちが喜びそうな言葉を選んで口にしていく。その足元では、ようやく出し終えた小水が恥辱の水たまりを作っていた。 |