第一章 美人社員の屈従

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 毛嫌いしていた加藤に色仕掛けを迫ったのは、西脇真澄にとって最終手段だった。
 ここで後ろ盾を得られなければ、これまでの我慢がすべて水の泡となってしまう。相手もそれがわかっているからこそ、とことん強気なのである。
「会社をこのまま辞めたところで、ソープにだって働き場所は余ってないぞ。そう言えばお前の友人も就職できなくて、公園でホームレスをしながら二束三文で体を売っているそうじゃないか」
 そうは言っても、公園等で寝泊りしているような容姿が人並みか、それ以下の女と実際にプレイを楽しむような男はほとんどいない。
 何百円かを稼ぐために、命令されれば犬相手でも喜んで股を開くのである。そうしなければ一日を生き抜くことができないのだ。
 借金だらけで無能な政府になんとかするだけの力はなく、ほとんど現状を黙認しているような状況だった。
 真澄自身も仲の良かった友人の獣姦現場を目撃してしまい、とてつもないショックを受けた。
 自分を裏切った同僚たちへの復讐心とともに、ここまで堕ちるくらいならばと今回の計画を実行したのである。
 真澄ほどの美貌があれば、より良い素材を求めている風俗店が採用を拒否するとは考えにくい。
 現実的にホームレスまで堕ちる可能性はないに等しいのだが、風俗関係の事情なんて知らない真澄にそんなことがわかるはずもなかった。
 むろん加藤とてそんな情報を与えてやるつもりは毛頭ない。極上の女がせっかく向こうからやってきてくれたのに、逃がすような真似をするのは愚の骨頂である。
「それともホームレスになって、仲間の浮浪者たちにケツの穴まで犯されるほうが好みか。ウヘヘ。頭のいいお前のことだ、どっちがマシかなんてことはすぐにわかるだろ」
 もう一度加藤が指先で真澄のアナルに触れる。過剰なくらい女体が震えたものの、抵抗されるようなことはなかった。
「う、うう……」
 指腹にためられていた唾液が菊座に塗りたくられるたび、恥辱で真澄の顔から火がでそうになってしまう。
 肛門がヌラついた感触に支配されてしまったあと、とうとう加藤の中指がアヌスへと侵入してきた。
「ああ……い、嫌」
 メリメリと排泄器官をこじ開けられる汚辱感が、泣きだしたいほど惨めな気分にさせる。
 両目から涙がこぼれ、頬を伝う頃には第二関節まで中指が埋めこまれてしまっていた。
「い、痛い……」
「フフン。まだ未経験だけあってさすがにキツいな。開発してやるのが楽しみだ」
 肛道の締めつけを堪能してから加藤は指を引き抜いた。それを真澄の口元へともっていき、舌で綺麗にするよう促す。
 アヌスへ指を入れられるだけでも、あれだけ拒否反応を示していただけに、当然真澄が素直に従うようなことはなかった。
「何度も同じ台詞を言わせんでほしいものだな。気が長いワシでもそろそろ限界だぞ」
 直前まで排泄器官に入っていた中指を、唇にぐいと押しつけてやる。
「自分からケツを振って近づいてきた淫売のくせに、いつまで気取ってるつもりだ。アアン?」
 淫売という単語がズキリと真澄の胸に突き刺さった。否定したくても相手の言葉は事実だった。
 もうどこまで堕ちるのも一緒。諦めとともにそう思った真澄は、おずおずとルージュの塗られた唇を開き、突出させた舌で加藤の中指を舐めはじめた。
 積極的にとはいかないが、それでも気持ち悪さを押し殺して、なるべく丹念に綺麗にしていく。
「よし、もういいぞ」
 加藤からそう告げられ、ようやく苦しみの時間が終わったのかとホッとしたのも束の間。次はペニスを舐めるように命令された。
 反抗を放棄している真澄は無言のまま頷き、スッと腰を落とした。
 床に両膝をつき、ベッドに座っている加藤の股間に恐る恐る顔を近づけていく。
 おぞましく醜悪な物体が目に映り、吐き気を催してしまいそうなほどの悪臭が漂ってくる。
「ほれ。早くワシの愚息を満足させんかい」
 加藤の一物は、真澄が経験してきた男たちとは明らかに違っていた。
 荒々しく血管を浮き上がらせてピーンと突起している剛直は、平均サイズよりひとまわりもふたまわりも太くて大きかった。
 使いこまれて真っ黒になっている姿は、アダルトビデオに出演している黒人男優たちに勝るとも劣らない。
 おっかなびっくり伸ばされた真澄の舌先が鈴口に触れると、加藤は感動に下半身を震わせた。あの小生意気だった女が、自分の一物を舐めているのかと思うとたまらなかったのだ。
 行為を開始したことで嫌悪感が多少は薄れてきたのか、たいした拒絶反応を示すことなく真澄は淡々と舌を動かしていた。
「いつまでも同じとこを舐めてないで、ちゃんと雁首あたりも頼むぞ。それと空いているほうの手で玉もマッサージするんだ」
 数々の注文にも真澄はきちんと従っていく。
 一度アナルを責めて、ある程度プライドを壊してやったことが功を奏したのかもしれない。加藤はそう考えていた。
 フェラチオの経験がなかっただけに満足するほどの舌使いではなかったが、自分を卑下し、反目していた真澄だけに加藤の喜びと欲望はムクムクと増大していく。
「ひととおり舐めたら、次はその可愛らしい口で咥えるんだ」
「ん……うう……」
 嗚咽に近い呻き声を漏らしながら、口を開いた真澄は自分の唾液で黒光りしている肉柱をそっと咥えた。
 相手の前に跪いて口奉仕をしていると、まるで自分が屈伏してしまったかのような錯覚にとらわれてしまう。
 男勝りだった西脇真澄はそれが嫌で、愛してきた男たちからのフェラチオをしてほしいという要望を、今まで頑なに拒否してきたのである。
 それがまさか毛嫌いしていたセクハラ社長のペニスを、自分から口に含むことになるとは思ってもいなかった。
「むふ…う…ん……」
 基本的に根が真面目な真澄は、心から望んだわけではない行為でも手を抜かず、できるかぎり懸命におこなっていた。
 すると不思議なことに、いつの間にかフェラチオに熱中している自分に気がついた。
 右手でサオを優しく扱き、左手で玉袋をマッサージするかのように柔らかく揉みこむ。そして口内では舌を器用に動かし、亀頭部分を重点的に刺激する。
「ククク。あれだけしゃぶるのを嫌だと言っておったくせに、いざ始めてみるとたいそうスケベな舌使いをするじゃないか」
 加藤が冷やかしてやると、すかさず真澄の頬が羞恥でカーッと赤く染まった。
 首を左右に振ってそんなことはないとアピールしているが、今の状態では空しいだけだった。
「よし、フェラはここまでだ」
 加藤は両手で自らのペニスから真澄の顔を離した。このままつづけられてしまうと、射精してしまいそうだったからである。
 強制的に行為を終了させられたせいで、真澄の唇からは涎が垂れていた。理知的な女のだらしない表情に、加藤はまたまた背筋をゾクゾクとさせてしまうのだ。



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